眠れる畸形のためのカノン
私のSM理論とその実践について、mixiの方に「愛と誘惑のサディズム」として日記に掲載していく事にしました。
つきましては、そのひとつの完成形を、外伝的に「ミステリー小説形式」で表現してみたいと思い立ちまして、こちらのブログで連載致します。
これまでとは、異なった取り組みになるために退屈される方が多いとは思いますが、何卒、ご容赦を賜りましてご愛読の程を宜しくお願いします。
眠れる畸形のためのカノン
第1章
都合というものがアタシにもあるが、どうやら天気の方にもそれがあるらしい。
今年は異常気象で、この夏、まだ雨らしい雨が降っていなかった。
「 だから、この嵐ってわけね。やってくれるわ!」
アタシは嵐の夜には、特に雷でも鳴ろうものなら人格が一変する。
男に無茶苦茶にされてから、今度はアタシが男を無茶苦茶にしたくなるのだ。
そしてそれは見ず知らずの男でなければならなかった。
ひとつは顔見知りの男では感情移入が出来ないこと。
そしてもっと重要な理由は、男を無茶苦茶にしている過程で、男が死んでしまうことがあるからであった。
去年の夏がそうだった。
そして確か、一昨年の夏も。
どちらの男も、まずまずのS男だったが、アタシを完全なM女だと思っていたから、私のマンションで激しいプレイが終わってから、帰ろうとした時
「今度は、アタシにも縛らせて」
とアタシは云った。
男たちは、気紛れなオフザケだと思って、素直に両手を差し出したうえに、猿轡までさせてくれた。
そのお陰で、彼らの瞳の奥に怯えが走るまでに、そんなに時間は経からなかった。
私は奥の部屋に置いている様々な器具を、全て彼らに使った。
そして最後は致死量の電気を彼らに流した。
その頃に、いつも嵐は収まる。
「それにしても、去年の彼は素敵だった」
彼とだったら、究極の愛に生きていけたかも知れなかったのに。
まあ、アタシはその時、もう既に殺人者だったから、そんなに長い時間を一緒に生きることにはならなかっただろうが、それでも束の間だけなら、彼は一緒に生きていける男だった。
でも、残念なことに彼は、一緒に死ねる男ではなかった。
素敵な男には2つの種類しかない。
一緒に生きていける男と一緒に死ねる男!
彼は紛れもなく前者だった。
だから、アタシは彼と一緒に死ねなかった。
嵐がいけないんだわ!
あの時、雨が止んでくれてさえいたら!
そして・・・
アタシが、奥の部屋の全ての器具を使い切って、最後のプレイの準備が完了した時、去年の彼は弱々しいが毅然として、猿轡を解くようにサインをよこした!
彼は、その時、既に死を覚悟し、全てを受け入れている事がアタシには良く分かったから、アタシは彼の猿轡を解いてあげた。
「くっ、ちょっとこれでは勘定が合わないな! おつりは来世、取りに来るから用意しておいてくれ!」
素敵な男!
「ええ、ずっと待っているわ」
「うん、頼む」
彼はこくんと頷いた。
それからアタシは、彼の衣服を全て脱がして、彼の肉体の全ての場所にキスした。
延々と、それは気が遠くなる程延々と、キスを繰り返した。
彼はもう眠ってしまったのだろうか?
アタシが激しい舌使いをしても無反応になった。
そうよ、このままキスを続けるのよ!
アタシの口ずけが、彼の肉体だけではなく、精神の全てを慰めるまで!
そして、このまま雨がやめば、アタシは彼の影として、一生、彼と共に生きて行ける。
影は、彼に寄り添ってはいるが、決して彼の邪魔をしない。
立体化することがないからだ。
だから、彼はその存在すら忘れてしまうことになる。
もし、私に男と一緒に生きることが許されるとすれば、アタシには影として生きていくことしか考えられなかった。
雨は、少し小降りになってきていた。
本当に雨が止めば、アタシは彼の傷の手当てをしてから、彼の胸元に飛び込める!
全てを捨てて、彼の所有物になれる!
そして彼は、幸福感に満ちているアタシに微笑みを返して、優しく頭を撫でて呉れる筈だった。
しかしその時、稲妻が急に走った!
アタシは反射的に、大容量の電気を流せるように改造した「ET-302R Remote」のツマミをMAXにセットすると、銀色に鈍く光る電極プラグを、彼の胸部に押しつけた。
その時の彼の表情と声、筋肉が焼ける匂い、その全てを忘れ去るために、私の眼から洪水のように涙が溢れた。
「さようなら、私の愛しい男、あなたがアタシと一緒に死ねる人だったら、すぐに後を追ったのに!」
涙は、このまま枯れることがないかのように次々と溢れ出し、動かなくなった彼の逞しい体の上に零れた。
アタシはそれから、奥の部屋に置いてあった全ての器具で、彼にしたことと全く同じ行為を自分に行った。
それは、自分自身の罪を償うためではなかった。
彼の表情と声、そして筋肉が焼ける匂いは、涙で忘れ去ることが許されていたが、痛みは自分の身体と心に刻み込まねばなかなかった。
アタシは来年、また次の男を見つけなければならないのだから。
そしてそれは、一緒に生きていける男か、一緒に死ねる男を見つけるまで繰り返される筈であった。
アタシは自らを強く縛り、虐めつけ、叩き、皮膚を剥ぎ取った。
そして、その痛みの波が、やがて引き潮になった頃、無情にもアタシの涙は既に枯れ果てていた。
つきましては、そのひとつの完成形を、外伝的に「ミステリー小説形式」で表現してみたいと思い立ちまして、こちらのブログで連載致します。
これまでとは、異なった取り組みになるために退屈される方が多いとは思いますが、何卒、ご容赦を賜りましてご愛読の程を宜しくお願いします。
眠れる畸形のためのカノン
第1章
都合というものがアタシにもあるが、どうやら天気の方にもそれがあるらしい。
今年は異常気象で、この夏、まだ雨らしい雨が降っていなかった。
「 だから、この嵐ってわけね。やってくれるわ!」
アタシは嵐の夜には、特に雷でも鳴ろうものなら人格が一変する。
男に無茶苦茶にされてから、今度はアタシが男を無茶苦茶にしたくなるのだ。
そしてそれは見ず知らずの男でなければならなかった。
ひとつは顔見知りの男では感情移入が出来ないこと。
そしてもっと重要な理由は、男を無茶苦茶にしている過程で、男が死んでしまうことがあるからであった。
去年の夏がそうだった。
そして確か、一昨年の夏も。
どちらの男も、まずまずのS男だったが、アタシを完全なM女だと思っていたから、私のマンションで激しいプレイが終わってから、帰ろうとした時
「今度は、アタシにも縛らせて」
とアタシは云った。
男たちは、気紛れなオフザケだと思って、素直に両手を差し出したうえに、猿轡までさせてくれた。
そのお陰で、彼らの瞳の奥に怯えが走るまでに、そんなに時間は経からなかった。
私は奥の部屋に置いている様々な器具を、全て彼らに使った。
そして最後は致死量の電気を彼らに流した。
その頃に、いつも嵐は収まる。
「それにしても、去年の彼は素敵だった」
彼とだったら、究極の愛に生きていけたかも知れなかったのに。
まあ、アタシはその時、もう既に殺人者だったから、そんなに長い時間を一緒に生きることにはならなかっただろうが、それでも束の間だけなら、彼は一緒に生きていける男だった。
でも、残念なことに彼は、一緒に死ねる男ではなかった。
素敵な男には2つの種類しかない。
一緒に生きていける男と一緒に死ねる男!
彼は紛れもなく前者だった。
だから、アタシは彼と一緒に死ねなかった。
嵐がいけないんだわ!
あの時、雨が止んでくれてさえいたら!
そして・・・
アタシが、奥の部屋の全ての器具を使い切って、最後のプレイの準備が完了した時、去年の彼は弱々しいが毅然として、猿轡を解くようにサインをよこした!
彼は、その時、既に死を覚悟し、全てを受け入れている事がアタシには良く分かったから、アタシは彼の猿轡を解いてあげた。
「くっ、ちょっとこれでは勘定が合わないな! おつりは来世、取りに来るから用意しておいてくれ!」
素敵な男!
「ええ、ずっと待っているわ」
「うん、頼む」
彼はこくんと頷いた。
それからアタシは、彼の衣服を全て脱がして、彼の肉体の全ての場所にキスした。
延々と、それは気が遠くなる程延々と、キスを繰り返した。
彼はもう眠ってしまったのだろうか?
アタシが激しい舌使いをしても無反応になった。
そうよ、このままキスを続けるのよ!
アタシの口ずけが、彼の肉体だけではなく、精神の全てを慰めるまで!
そして、このまま雨がやめば、アタシは彼の影として、一生、彼と共に生きて行ける。
影は、彼に寄り添ってはいるが、決して彼の邪魔をしない。
立体化することがないからだ。
だから、彼はその存在すら忘れてしまうことになる。
もし、私に男と一緒に生きることが許されるとすれば、アタシには影として生きていくことしか考えられなかった。
雨は、少し小降りになってきていた。
本当に雨が止めば、アタシは彼の傷の手当てをしてから、彼の胸元に飛び込める!
全てを捨てて、彼の所有物になれる!
そして彼は、幸福感に満ちているアタシに微笑みを返して、優しく頭を撫でて呉れる筈だった。
しかしその時、稲妻が急に走った!
アタシは反射的に、大容量の電気を流せるように改造した「ET-302R Remote」のツマミをMAXにセットすると、銀色に鈍く光る電極プラグを、彼の胸部に押しつけた。
その時の彼の表情と声、筋肉が焼ける匂い、その全てを忘れ去るために、私の眼から洪水のように涙が溢れた。
「さようなら、私の愛しい男、あなたがアタシと一緒に死ねる人だったら、すぐに後を追ったのに!」
涙は、このまま枯れることがないかのように次々と溢れ出し、動かなくなった彼の逞しい体の上に零れた。
アタシはそれから、奥の部屋に置いてあった全ての器具で、彼にしたことと全く同じ行為を自分に行った。
それは、自分自身の罪を償うためではなかった。
彼の表情と声、そして筋肉が焼ける匂いは、涙で忘れ去ることが許されていたが、痛みは自分の身体と心に刻み込まねばなかなかった。
アタシは来年、また次の男を見つけなければならないのだから。
そしてそれは、一緒に生きていける男か、一緒に死ねる男を見つけるまで繰り返される筈であった。
アタシは自らを強く縛り、虐めつけ、叩き、皮膚を剥ぎ取った。
そして、その痛みの波が、やがて引き潮になった頃、無情にもアタシの涙は既に枯れ果てていた。
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