シベリアンブルーサイド 第2部 第1章 1
何かムラムラと執筆意欲が湧いてきたので、「シベリアン・ブルーサイド」の第2部を今日から書き下ろしますね!ヨロピクです!!!
シベリアン・ブルーサイド 第2部 タチアナが見た月
第1章
昨夜からペシニフの森には、濃い霧が立ち込めていて、5m先も満足に見通せない状態だった。これでは流石に、シベリアン・ブルーのソフィアを捕獲するのは、無理と云うものだ。それに今日はシベリア育ちの俺にとっても寒すぎる。
全隊に捕獲作戦の一時中止を命じよう!何、焦ることはない。
確かに、はるばるシベリアからバシコルトスタン共和国に入って5日が過ぎているが、今回は「凍る月」のレミコフからの情報だ。
彼の情報は常に的確であると共に、相手に全く気付かれていることがない。ソフィアが首府ウファに潜伏していることは間違いないだろう。
それに、今回、この作戦に動員している兵は、俺の直属部隊ではない。ロシア国境軍から回してもらった兵だ。
まさかロシア国境軍が、シベリアンブルーの雌猫1匹を探し出すために動員されているとは、ソフィアも思わないだろう。
これも、国境庁第1次官のウラジーミル・プロニチェフと、KGB高等国境指揮学校で同期だったお蔭と云うべきか。
「アレクセイ・ウラジミール・シャロノフ少将(Генера́л-майо́р) 閣下!エカテリーナ・ラミレイス中尉(Лейтена́нт)殿がおみえです」
「俺の名前をフルネームで呼ぶなと云った筈だが・・・」
「も、申し訳ありません」
「アレック、相変わらずご機嫌が悪そうね」
エカテリーナは分厚い毛皮のコートを脱ぐと、つかつかと俺の書斎に入ろうとして、ふと立ち止まった。
「軍曹、もう戻っていいわよ」
「は、はい!有難うございます」
軍曹は俺と目を合わせるのが怖かったのか、エカテリーナだけに敬礼すると、そそくさと部屋を出て行った。
「カーチャ、一体、俺に何の用だ」
「何の用だとはご挨拶ね!これでも、とびきりの情報を持って来てあげたのよ」
エカテリーナは俺に意味有りげなウィンクを送って寄越した。
「情報だと?ふん、そんなものは電話1本で済む事じゃないか」
「お生憎様!電話なんかで済ましたら、あなたに会えないじゃない」
エカテリーナは、俺の部隊の専用外出服である、亜麻色のダブルブレスト・スペンサージャケットを脱ぐと、ソファーに深く腰を下ろした。
「おいおい、ここでストリップショーでも始めるつもりか?」
「ストリップショーはお嫌い?」
「カーチャ、今日は妙に絡むじゃないか」
「あなたが素直じゃないからよ」
エカテリーナは、タイトのアーミースカートを脱ぐと、銃ホルダー付きのガーターベルトも緩め始めた。
「分かった!俺の負けだ!話を聞こう!分かってるとは思うが、ここはヴォルゴグラードの俺の本部ではない。国境軍の施設だ。奴等の手前もあるしな」
「へえ?エニセイの狂虎と恐れられたシャロノフ少将閣下も、ムルマンスク事変以来、すっかりいい子になったって訳ね」
「何とでも云え!それに俺は今、或る重要な作戦で忙しいんだ!手短に頼む」
「重要な作戦って、ただ小娘のお尻を追いかけているだけじゃない」
「知っていたのか?」
「当たり前でしょ!何年、あなたの秘書をやってたと思ってるのよ」
エカテリーナは、フフンと鼻を鳴らしながら、まるで品物を値踏みでもするかのような目付きで俺を見上げた。
「小娘の尻を追うのは俺の趣味だ!まあ、正確には尻の穴だがな」
「アハハ、そうこなくちゃ!あなたは自分の嗜好に忠実であるべきなのよ!肛門卿になるスイッチの在り処を忘れないで!あなたの究極の優しさを、ゾッとする残忍性に昇華させる心のスイッチ!あたしは可虐のスイッチが入った肛門卿シャロノフが好きなの」
「やはり君は変態だ」
「あなたには云われたくないわ」
その時、狼が近くを通ったのか、軍用犬が一斉に遠吠えを始めた。常に死と背中合わせの、本当の意味での野生の犬と、厳しい訓練はされているが人間の為にだけ生きている家畜の犬。そのコーラスは俺の耳には、狼が軍用犬に野生に戻れと促しているように聞こえた。
「ジャーマン・シェパードって嫌い!狼でもなくペットでもない、その中途半端さが嫌なの」
かつてエカテリーナが、そう、あれはムルマンスク事変の時だった。俺たちの跡を追う、ゲルニカの雫が放った軍用犬を、ベルト給弾式機関銃PM1910で、一匹残らず撃ち殺した時の情景を思い出して、俺はブルッと身震いした。
「アレック、今から一緒に出掛けるわよ!ウファの郊外のホテルに、或る女性を呼んであるの。先刻話した、とびきりの情報は彼女が持っているわ」
「今からか?外出するには外は少し寒すぎやしないか?」
「大丈夫!彼女は、タチアナはきっとあなたの好みだわ」
「そう云う問題ではなくて」
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